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Japanische Klassiker mit Furigana

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こぞうのゆめ

潤一郎ラビリンスV――少年の王国

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

「泣くなら泣くがいゝ、こんな時には泣き止むまで放って置くより仕方がない」

父親も母親も祖母も、みんな申し合わせたようにそうあきらめて居るらしかった。

まだ二三日はある筈だと思って居た赤児のミルクが、もう一滴もなくなっていた事を知ったのは今朝であった。が、三人の親たちは其れよりももっと悲惨な事実に気が付いて居た。明後日の月給日が来る迄は、何処を尋ねても家中に一文の銭もないのである。それを口へ出すのが恐ろしさに、三人は黙ってお互の腹の中を察して居た。こう云う折にはいつもそうするように、姉娘の初子が砂糖水を作ったり、おじやを煮たりしてあてがって見たが、どうした訳か赤児は一切そんな物を受け付けないで、「ウマウマ、ウマウマ」と云いながら、一層性急な声を挙げた。

貝島は、この声に耳を傾けて居ると、悲しい気持を通り越して、苦も楽もないひろ/″\とした所へ連れて行かれるような心地がした。泣くならウンと泣いてくれる方がいゝ。もっと泣けもっと泣けと、胸の奥で独語を云った。かと思うと次の瞬間には、ジリジリと神経が苛立って、体が宙へ吊るし上るようになって、自分の存在が肩から上ばかりにしか感ぜられなかった。