Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
」と、折々上人から諭されるにつけても、二人は自分たちの境遇の有り難さを、感謝せずには居られなかった。上人のような高徳の聖でさえ、此の山へ逃げて来られる以前には、有りと有らゆる浮世の煩悩に苦しめられて、其の絆を断ち切るまでに、長い間の観行を積まれたのだそうである。まして上人のお弟子の中には、朝夕経文の講釈を聴きながら、未だに煩悩を絶やす事が出来ないのを、歎いて居る者が多勢あると云う。二人は世の中を知らないお蔭で、それほど恐ろしい煩悩と云う悪病に、罹らずに済んでしまうのである。煩悩を滅せば、やがて菩提の果を證することが出来ると云う其の煩悩を、始めから解脱して居る自分たちは、近いうちに稚児髷を剃り落して戒律を受けたなら、必ず師の御坊にも劣らぬような貴い出家になれるであろうと、其れを楽しみに日を送っていた。
けれども二人は、子供らしい無邪気な好奇心から、煩悩の苦しみとやらに充ちて居る浮世と云うものがどんな忌まわしい国土であるか、其処に住みたいとは願わぬまでも、それについていろ/\の想像を廻らして見る事はあった。上人を始め多くの先達の話に依れば、此の穢わしい世の中で、西方浄土の俤を僅かに伝へて居るところは、自分たちの居る山だけだそうである。