Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
或る日の明け方、二人は上人の仰せをうけて、横川の僧正の許へ使いにやられた帰り路に、人通りの稀な杉の木蔭に腰をおろして、暫く疲れを休めて居た。千手丸はおり/\深い溜息をつきながら、兜率谷の底から立ちのぼる朝靄の、尾上の雲にながれて行くさまを、一心に視つめて居たが、ふと、
「そなたはさぞ、ちかごろの麿の様子を不審に思って居やるだろう。」
こう云って、にこりともせずに年少の友の方を振りかえった。
「………まろはそなたと浮世の話をし合ってから、女人の事が気にかゝって、明け暮れ此のように悩んで居る。まろはゆめ/\、女人に会いたいと思うのではないけれど、耻かしいことには、如来の尊像の前に跪いて、いくら祈願を凝らしても、女人の俤が眼の先にちらついて、片時も佛を念ずる隙がない。何と云う呆れ果てた人間になったのだろう。………」
瑠璃光は驚いて、千手の頬から流れ落ちる涙を見た。泣いて居るからには、千手は定めし真面目なのであろう。それにしても、女人の問題がどうして彼に此れほどの苦悶を与えるのか、その理由が瑠璃光には分らなかった。
「そなたはまだ、出家をするのに一二年間があるが、まろはことし得度するのだと、上人が仰っしゃっていらしった。