Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
暇を出されても、親の家へ帰って、安楽に暮せるくらいなら、初めから奉公なぞを勤めはしない。貧乏も適当な程度だと、却って神経を鋭敏にする利益があるが、労働となると、寧ろ神経を頑丈にし、遅鈍にさせるばかりである。その證拠には、華族や富豪の若旦那の神経と、人足や立ん坊の神経とを比べて見れば直ぐに分る。労働の為めに体の疲れるのは忍ぶ事が出来るけれど、神経の鈍るのは全く恐ろしい。そうなったら藝術家はもうおしまいである。
だから己は、どんなに学問がしたくっても、牛乳や新聞の配達をして、労役を犯してまでも、苦学する気には毛頭ならない。そんなセカセカした心持ちで居たら、大切な瞑想の時間がなくなる。折角起りかけた美しい想像だの幻影だのが、頭の外へ飛んで行ってしまう。
こう考えて来ると、己はつく/″\運の悪い人間だ。己は藝術家になると云う希望を、全然抛った訳でもないが、しかし此の儘進んで行けば、商人にもなれず詩人にもなれず、虻蜂取らずで終る事は分り切って居る。分り切って居ながら、どうする事も出来ないのだから、しみ/″\厭になってしまう。
「あゝ、己が世間並の家に生れて、大学へ行く事が出来たらなあ。