Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
己は毎々、外出中の時間を有効に使用する事に馴て居るので、自転車を小屋の木戸番に預けると、直に切符の売り場へ行って、「魔術は何時から始まるのですか。」と、其処の少女に聞いて見た。
「今ちょうど、一回の終りで魔術が済んだところです。此れから写真になりますから、まだ魔術には二時間ぐらい暇がありましょう。」
少女は例の早口で、己の気も知らずにこんな事をぺらぺらとしゃべった。もう三十分も早かったら間に合ったろうに、惜しい事をしたと己は思った。しかし決して、己は其の儘あきらめる気にはなれなかった。魔術の興行は半月も続いて居るのだから、今日でなければ見られないと云う心配はないのだが、一旦こうと思い詰めると、どうしても中途で止せない性分であった。
「そうかい、そんなら後で見に来よう。」
己は斯う云って、いろいろな魔法の演技が、面白そうに畫いてあるペンキ塗りの絵看板を恨めしそうに見上げながら、再び木戸から自転車を曳き出して其れに跨った。こう云う事もあろうかと考えて、若しも時間に余裕があったら、その間に先へ廣小路の方へ行って来ようと、豫め手筈を極めて置いたのである。
今日も昨日と同じように爽やかな、身も心も軽々とする天気であった。