Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
己は必ずや、敢然として外界の壓迫に抵抗しつゝ、ぐんぐんと目的地へ猛進して行くだろう。然るに己の素質は、不幸にして政治家にも、学者にも、実業家にも、宗教家にも不適当なのである。己はたゞ、自分を未来の藝術家―――或は詩人として観察する時、其処に始めて非凡なる素質の閃きを感ずるのである。
己は勿論、詩だの歌だのと云うものをまだ一遍も作った事はない。況や藝術とはどんな物だか、ハッキリとした考えなんぞある筈がない。けれども何だか己のような傾向を持った人間が、満足な境遇に育てられ、適当な刺戟を与えられたら、きっと偉大なる詩人とか藝術家とかになれるのだろうと、云うような気がしてならない。尤も、己の心に斯う云う自覚が生じたのは、つい近頃の事なのだ。此の間まで、己は自分の詩人的傾向を、寧ろ忌まわしい缺点だと信じて、私かに警めたり嘆いたりして居た。どうして己の頭の中には、いつもいつも茫漠とした、取り止めのない空想ばかりが湧き上って来るのだろう。どうして己は世間一般の青年のように実着な仕事を真面目に働こうとしないで、夢のような美しさに憧れてのみ居るのだろう。己の耳には年中不思議な音楽が聞えて居る。