Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
義弟はそれに口少く答え、馬を曳いて、帰って行く。
私は妻と並んで、爪先あがりの坂道を歩き出した。四辺には殆ど人家は見られない。激しい風雪を避けるため、人家は多く崖添いの場所を選び、木立に囲われて、建てられているという。
坂道の両側は段段田である。極めて小さくくぎられているのもある。人間が二人、下り立てば、尻をぶっつけ合うに相違ない。桑畑もある。頬白が低く飛び抜けて行く。小川も勢よく流れている。その水音が妙に快く、甘美にさえ聞える。
こんな雄渾な風景の中にこんなつつましい生活があったのか。商家に育った私は、少年の頃から、こんな風景と生活とに憧憬に近いものを抱いている。今、私はその風景の中を歩いている。不思議である。が、こんなところで生れ育った貞子を、あの夏の夜、私の家の近くの屋台店まで運ばせたものは何か。私はやはり不思議なものの力を想うより他はなかった。
かなり急な小径を登ると、杉の大樹を主にして、桂、柏、槙、欅、椋、檜、楓、伽羅、山梨、漆、樫等の木立に囲われて、妻の生家はあった。
貞子は自分の子を世に残したいとは思わぬと言う。女性としては比較的合理的な妻は、私達の年齢を考えた上のことでもあろう。