Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
五月雨の水を湛えた段段田は、それぞれの水面に早苗の緑を映している。しかし段段田が遠く傾いて行くにつれ、早苗の緑は次第にその間隔を失い、山裾の方は緑一色で、つまり緑裾濃の大景観が展けている時もある。そんな季節の時には、空にはかっこうが鳴いている。ででっぽっぽうも鳴いている。畠の隅には、こぼれ生えの大根の花が咲き、紋白蝶が群り飛んでいる。庭隅には、紫のかっこう花も咲いている。
晩夏の季節の時もある。蔵王山峰から吹き渡って来る風は、既に極めて冷ややかである。風の中に、素肌に浴衣を着た邦子が笑っている。邦子は六つ、パンツもはいていない。大きなふぐりを垂れた、種山羊を引いた男が通りかかる。綱を引く山羊の力が強いためか、反り返っている。少し誇張しているようなところもある。男は足を停めて、妻に話しかける。種山羊の自慢話のようであるが、言葉は殆ど解らない。山風に山羊の毛が翻っている。天神山の芒原で、私は初めて野生の鈴虫の鳴くのを聞いた。
晩秋の季節の時もある。妻は村の青年会に招かれている。私は囲炉裏端で、郁子と絵本を見ている。郁子は三つ、綿入れの絆纏を着て、色は白く、こけし人形のようである。