Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
が、帽子は的を外れ、窓の下に落ちる。私達は顔を並べて窓の外に出す。が、次ぎの瞬間、あわてて顔を引込める。既に薄暗くなった露地の隅で、琵琶の師匠が行水を使っていたのである。
「お帽子、じきに久子に持たしてやりますえ」
窓の下から女師匠の声が聞えて来る。甘ったるい声である。
「醜態」
若い私達はいつもそんな風にして、互に運動神経を競い合っていたのである。決して他意はない。しかしどんな弁解も役立たない。私達は自尊心を傷つけられ、苦苦しい沈黙を続けているより他はなかった。
「久子はん、お湯わいたか」
それ以来、夏の日が西の空に傾く頃になると、決って女師匠の声が聞えて来る。続いて、盥を据える音、湯を注ぐ音。やがて手拭を使う湯の音まで聞える。
「久子はん、すまんけんど、さし湯持って来てんか」
例のひどく甘ったるい声である。
「ああ、ええ気持やわ」
独言としては少し大き過ぎる。それにひどく浮き浮きともしている。確かにその声は何者かの耳を意識しているとも取れなくない。すると更にその声は人の目を厭うというより、頻りに誘っているようにも思われて来る。が、私にはそんな女の気持はまだ全然理解できない。