Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
」
「それはどこだ。」
「吉原の大門前。」
「いくらで買った。」
「三円七十銭。」
巡査は長襦袢を卓子の上に投捨てたなり黙ってわたくしの顔を見ているので、大方警察署へ連れて行って豚箱へ投込むのだろうと、初のようにからかう勇気がなくなり、此方も巡査の様子を見詰めていると、巡査はやはりだまったままわたくしの紙入を調べ出した。紙入には入れ忘れたまま折目の破れた火災保険の仮証書と、何かの時に入用であった戸籍抄本に印鑑証明書と実印とが這入っていたのを、巡査は一枚々々静にのべひろげ、それから実印を取って篆刻した文字を燈火にかざして見たりしている。大分暇がかかるので、わたくしは入口に立ったまま道路の方へ目を移した。
道路は交番の前で斜に二筋に分れ、その一筋は南千住、一筋は白髯橋の方へ走り、それと交叉して浅草公園裏の大通が言問橋を渡るので、交通は夜になってもなかなか頻繁であるが、どういうことか、わたくしの尋問されるのを怪しんで立止る通行人は一人もない。向側の角のシャツ屋では女房らしい女と小僧とがこっちを見ていながら更に怪しむ様子もなく、そろそろ店をしまいかけた。
「おい。