Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
と叫び、一歩後れて歩こうとするわたくしの手を取り、「早くさ。あなた。」ともう馴れ馴れしい調子である。
「いいから先へお出で。ついて行くから。」
路地へ這入ると、女は曲るたび毎に、迷わぬようにわたくしの方に振返りながら、やがて溝にかかった小橋をわたり、軒並一帯に葭簀の日蔽をかけた家の前に立留った。
「あら、あなた。大変に濡れちまったわ。」と傘をつぼめ、自分のものよりも先に掌でわたくしの上着の雫を払う。
「ここがお前の家か。」
「拭いて上げるから、寄っていらっしゃい。」
「洋服だからいいよ。」
「拭いて上げるっていうのにさ。わたしだってお礼がしたいわよ。」
「どんなお礼だ。」
「だから、まアお這入んなさい。」
雷の音は少し遠くなったが、雨は却て礫を打つように一層激しく降りそそいで来た。軒先に掛けた日蔽の下に居ても跳上る飛沫の烈しさに、わたくしはとやかく言う暇もなく内へ這入った。
荒い大阪格子を立てた中仕切へ、鈴のついたリボンの簾が下げてある。其下の上框に腰をかけて靴を脱ぐ中に女は雑巾で足をふき、端折った裾もおろさず下座敷の電燈をひねり、
「誰もいないから、お上んなさい。