Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
一体、この盛場の女は七八百人と数えられているそうであるが、その中に、島田や丸髷に結っているものは、十人に一人くらい。大体は女給まがいの日本風と、ダンサア好みの洋装とである。雨宿をした家の女が極く少数の旧風に属していた事も、どうやら陳腐の筆法に適当しているような心持がして、わたくしは事実の描写を傷けるに忍びなかった。
雨は歇まない。
初め家へ上った時には、少し声を高くしなければ話が聞きとれない程の降り方であったが、今では戸口へ吹きつける風の音も雷の響も歇んで、亜鉛葺の屋根を撲つ雨の音と、雨だれの落ちる声ばかりになっている。路地には久しく人の声も跫音も途絶えていたが、突然、
「アラアラ大変だ。きいちゃん。鰌が泳いでるよ。」という黄いろい声につれて下駄の音がしだした。
女はつと立ってリボンの間から土間の方を覗き、「家は大丈夫だ。溝があふれると、此方まで水が流れてくるんですよ。」
「少しは小降りになったようだな。」
「宵の口に降るとお天気になっても駄目なのよ。だから、ゆっくりしていらっしゃい。わたし、今の中に御飯たべてしまうから。」
女は茶棚の中から沢庵漬を山盛りにした小皿と、茶漬茶碗と、それからアルミの小鍋を出して、鳥渡蓋をあけて匂をかぎ、長火鉢の上に載せるのを、何かと見れば薩摩芋の煮たのである。