Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
実は此方への来がけに、途中で食麺麭と鑵詰とを買い、風呂敷へ包んでいたので、わたくしは古雑誌と古着とを一つに包み直して見たが、風呂敷がすこし小さいばかりか、堅い物と柔いものとはどうも一緒にはうまく包めない。結局鑵詰だけは外套のかくしに収め、残の物を一つにした方が持ちよいかと考えて、芝生の上に風呂敷を平にひろげ、頻に塩梅を見ていると、いきなり後の木蔭から、「おい、何をしているんだ。」と云いさま、サアベルの音と共に、巡査が現れ、猿臂を伸してわたくしの肩を押えた。
わたくしは返事をせず、静に風呂敷の結目を直して立上ると、それさえ待どしいと云わぬばかり、巡査は後からわたくしの肱を突き、「其方へ行け。」
公園の小径をすぐさま言問橋の際に出ると、巡査は広い道路の向側に在る派出所へ連れて行き立番の巡査にわたくしを引渡したまま、急しそうにまた何処へか行ってしまった。
派出所の巡査は入口に立ったまま、「今時分、何処から来たんだ。」と尋問に取りかかった。
「向の方から来た。」
「向の方とは何方の方だ。」
「堀の方からだ。」
「堀とはどこだ。」
「真土山の麓の山谷堀という川だ。