Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
車に乗ってからも相手が避けないかぎり話をしつづけるので、この門附の娘とは余程前から顔を知り合っていたのであった。
門附の娘はわたくしが銀座の裏通りで折々見掛けた時分には、まだ肩揚をして三味線を持たず、左右の手に四竹を握っていた。髪は桃割に結い、黒襟をかけた袂の長い着物に、赤い半襟。赤い帯をしめ、黒塗の下駄の鼻緒も赤いのをかけた様子は、女義太夫の弟子でなければ、場末の色町の半玉のようにも見られた。細面のませた顔立から、首や肩のほっそりした身体つきもまたそういう人達に能く見られる典型的なものであった。その生立や性質の型通りであるらしいことも、また恐らくは問うに及ばぬことであろう。
「すっかり、姉さんになっちまったな。まるで芸者衆だよ。」
「ほほほほほ、おかしか無い。」と言いながら娘は平打の簪を島田の根元にさし直した。
「おかしいものか。お前も銀座仕込じゃないか。」
「でも、あたい、もう彼方へは行かないんだよ。」
「こっちの方がいいか。」
「此方だって、何処だって、いいことはないよ。だけれど、銀座はあぶれると歩いちゃ帰れないし、仕様がないからね。」
「お前、あの時分は柳島へ帰るのだったね。