Japanische Klassiker mit Furigana
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とうみょうのまき
灯明之巻
泉 鏡花
Lesen Sie 灯明之巻 (とうみょうのまき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.444 Zeichen · 47 Bildschirme
一
「やあ、やまかがしや蝮が居るぞう、あっけえやつだ、気をつけさっせえ。」
「ええ。」
何と、足許の草へ鎌首が出たように、立すくみになったのは、薩摩絣の単衣、藍鼠無地の絽の羽織で、身軽に出立った、都会かららしい、旅の客。――近頃は、東京でも地方でも、まだ時季が早いのに、慌てもののせいか、それとも値段が安いためか、道中の晴の麦稈帽。これが真新しいので、ざっと、年よりは少く見える、そのかわりどことなく人体に貫目のないのが、吃驚した息もつかず、声を継いで、
「驚いたなあ、蝮は弱ったなあ。」
と帽子の鍔を――薄曇りで、空は一面に陰気なかわりに、まぶしくない――仰向けに崖の上を仰いで、いま野良声を放った、崖縁にのそりと突立つ、七十余りの爺さんを視ながら、蝮は弱ったな、と弱った。が、実は蛇ばかりか、蜥蜴でも百足でも、怯えそうな、据らない腰つきで、
「大変だ、にょろにょろ居るかーい。」
「はああ、あアに、そんなでもねえがなし、ちょくちょく、鎌首をつん出すでい、気をつけさっせるがよかんべでの。」
「お爺さん、おい、お爺さん。」
「あんだなし。」
と、谷へ返答だまを打込みながら、鼻から煙を吹上げる。