Japanische Klassiker mit Furigana
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もゆるほお
燃ゆる頬・聖家族
堀 辰雄
Lesen Sie 燃ゆる頬・聖家族 (もゆるほお) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.309 Zeichen · 144 Bildschirme
おや、彼女かしら?
そう思って彼は一気にその曲り角まで歩いて行った。そこには西洋人たちが「巨人の椅子」と呼んでいる丘へ通ずる一本の小径があり、その小径をいまの少女が歩いて行きつつあった。思ったよりも遠くへ行っていなかった。
そしてまちがいなく彼女であった。
彼もホテルとは反対の方向のその小径へ曲った。その小径には彼女きりしか歩いていないのである。彼は彼女に声をかけようとして何故だか躊躇をした。すると彼は急に変な気持になりだした。彼はすべてのものを水の中でのように空気の中で感ずるのである。たいへん歩きにくい。おもわず魚のようなものをふんづける。彼の貝殻の耳をかすめてゆく小さい魚もいる。自転車のようなものもある。また犬が吠えたり、鶏が鳴いたりするのが、はるかな水の表面からのように聞えてくる。そして木の葉がふれあっているのか、水が舐めあっているのか、そういうかすかな音がたえず頭の上でしている。
彼はもう彼女に声をかけなければいけないと思う。が、そう思うだけで、彼は自分の口がコルクで栓をされているように感ずる。だんだん頭の上でざわざわいう音が激しくなる。