Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちのかたみ
父の形見
豊島 与志雄
Lesen Sie 父の形見 (ちちのかたみ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.879 Zeichen · 14 Bildschirme
茲で云っておこう。秋山と矩子とはひそかに愛し合っていたのだ。君の父はそれを秋山から打明けられたのだった。
病室に集ったのは、ごく近親の者と親しい者だけだった。不慮の事件のためには、いろいろ多用だった。君の父は始終沈着で、何かと指図する役目の方に廻っていた。そして常に矩子から眼を離さなかった。
一通りの用件がすむと、枕頭の卓子の上に置かれて誰も手に触れようとしない拳銃を、君の父は取上げてハンカチに包んだ。そして黙って上衣のポケットに入れた。公然となされたその動作を、一人として怪しむ者はなかった。
夕刻、死体は自宅へ帰った。その夜道く、奥庭に面した縁側で、君の父は矩子と短い会話をした。
「秋山の死顔は、美しいとは思いませんか。」
矩子は無言だった。
「苦しんでじりじり死んでいくより、幸福だったに違いありません。秋山のためにも、あなたのためにも……。」
矩子は硬直したような顔をあげて、彼の眼を見入った。それから突然、そのままの眼からはらはらと涙をこぼした。涙をこぼしながら、彼の眼を見入っていた。彼はその視線の痛みに堪えかねて、顔をそむけた。
「分りました。