Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎゅうにくとばれいしょ

牛肉と馬鈴薯・酒中日記

国木田 独歩

Lesen Sie 牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (ぎゅうにくとばれいしょ) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.018 Zeichen · 109 Bildschirme

Aozora Bunko

妻は猶おその様子まで詳しく聴きたかったらしいが自分の進まぬ風を見て、別に深くも訊ねず、

「どんなに心配しましたろう。もしも渡さなかったらと思って取越苦労ばかり為ていました」と万斤の重荷を卸ろしたよろこび。自分は懐に片手を入れて一件を握っていたが未だ夢の醒めきらぬ心地がして茫然としている。

「御飯は?」

「食って来た」

「母上さんの処で?」

「あア」

「大変お顔の色が悪う御座いますよ」と妻は自分の顔を見つめて言う。

「余り心配したせいだろう」

「直ぐお寝みなさいな」

「イヤ帳簿の調査もあるからお前先へ寝ておくれ」と言って自分は八畳の間に入り机に向った。然し妻は容易に寝そうもないので、

「早くお寝みというに」

自分はこれまで、これほど角のある言葉すら妻に向って発したことはないのである。妻は不審そうに自分の方を見ているようであったが、その中床に就てしまった。自分は一度殊更に火鉢の傍に行って烟草を吸って、間の襖を閉めきって、漸く秘密の左右を得た。

懐からそっと盗すむようにして紙幣の束を出したが、その様子は母が机の抽斗から、紙幣の紙包を出したのと同じであったろう。

一円紙幣で百枚! 全然注文したよう。