Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎゅうにくとばれいしょ

牛肉と馬鈴薯・酒中日記

国木田 独歩

Lesen Sie 牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (ぎゅうにくとばれいしょ) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.018 Zeichen · 109 Bildschirme

Aozora Bunko

或日の事、十歳ばかりの児が来て、

「校長先生、岩崎さんが私の鉛筆を拾って返しません」と訴たえて来た。拾ったとか、失ったとか、落したとかいう事は多数の児童を集めていることゆえ常に有り勝で怪むに足ないのが、今突然この訴えに接して、自分はドキリ胸にこたえた。

「貴所が気をつけんから落したのだ、待ておいで、今岩崎を呼ぶから」と言ったのは全然これまでの自分にないことで、児童は喫驚して自分の顔を見た。

岩崎という十二歳になる児童を呼んで「あなたは鉛筆を拾いはしなかったか」と聞くと顔を赤らめてもじもじしている。

「拾ったでしょう。他人の者を拾ったら直ぐ私の所へ持て出るのが当前だのにそれを自分の者に為るということは盗んだも同じことで、甚だ善くないことですよ。その鉛筆を直ぐこの人にお返しなさい」と厳かに命つけた。

そんならば何故自分は他人の革包を自分の箪笥に隠して置くのであるか。

自分はその日校務を了ると直ぐ宅に帰り、一室に屈居で、悶き苦しんだ。自首して出ようかとも考がえ、それとも学校の方を辞職して了うかとも考がえた。この二を撰ぶ上に就いて更に又苦しんだけれど、いずれとも決心することが出来ない。