Japanische Klassiker mit Furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Lesen Sie 狂い凧 (くるいだこ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.430 Zeichen · 226 Bildschirme
手は前に突く。叩く。足は前方に蹴上げる。眼や口や耳などの感覚器も、おおむね前方の敵を対象としてついているね。背中だけは、皆から見離されて、置きざりにされている。どういうわけかな」
「ヒジ鉄というのがあるよ」
「うん。それはある。でもそれは消極的なものだ。敵にはそれほど響かない」
葡萄を含んだまま、しばらく矢木は考えていた。こういう時、早く呑み込んでしまえばいいのにと、私はいつもいらいらする。そうさせるようなものが、昔から矢木という男にはあった。
「昔子供の頃、おやじから恐い話を聞かせられると、おれたち兄弟はひしひしと、背中をおやじにすりつけて行ったものだ。抱きついたりは決してしなかった。背中の方がぞくぞくと恐くなるからだ。今の子供もそうかね?」
「今でもそうだろう」
「すると人間という動物は、もともと攻撃的に出来ているのかな。背中をさらして歩く動物、しかも守勢的な動物は、たいてい甲羅だのトゲだのを持っていらあね。たとえば亀だとか――」
茶が入ったので、会話は途切れた。半分ほど飲んで、私は訊ねた。
「それがバスからすべり落ちた、君の弁解かね」
「いや。弁解というわけじゃないけれども――」