Japanische Klassiker mit Furigana
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きつね
狐
永井 荷風
Lesen Sie 狐 (きつね) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.770 Zeichen · 20 Bildschirme
二
縁先の敷石の上に置いた盆栽のには一二枚の葉が血のように紅葉したまま残って居た。父が書斎の丸窓外に、八手の葉は墨より黒く、玉の様な其の花は蒼白く輝き、南天の実のまだ青い手水鉢のほとりに藪鶯の笹啼が絶間なく聞えて屋根、軒、窓、庇、庭一面に雀の囀りはかしましい程である。
私は初冬の庭をば、悲しいとも、淋しいとも思わなかった。少くとも秋の薄曇りの日よりも恐しいとは思わなかった。散り敷く落葉を踏み砕き、踏み響かせて馳せ廻るのが、却て愉快であった。然し、植木屋の安が、例年の通り、家の定紋を染出した印半纒をきて、職人と二人、松と芭蕉の霜よけをしにとやって来た頃から、間もなく初霜が午過ぎから解け出して、庭へはもう、一足も踏み出されぬようになった。
二
家の飼犬が知らぬ間に何処へか行ってしまった。犬殺しにやられたのだとも云うし、又、いい犬だったから、人が盗んで連れて行ったのだとも、議論はまちまちであった。私は是非とも、新に二度目の飼犬を置くように主張したが、父は犬を置くと、さかりの時分、他処の犬までが来て生垣を破り、庭を荒すからとて、其れなり、家中には犬一匹も置かぬ事となった。