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Japanische Klassiker mit Furigana

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きつね

狐

永井 荷風

Lesen Sie 狐 (きつね) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.770 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

て居る属官である。父はこの淀井を伴い、田崎が先に提灯をつけて、蟲の音の雨かと疑われる夜更の庭をば、二度まで巡回された。私は秋の夜の、如何に冷かに、如何に清く、如何に蒼いものかを知ったのも、生れて此の夜が初めてであった。

母上は其の夜の夜半、夢ではなく、確かにこんこんと云う啼き声を聞いたとの話。下女は日が暮れたと云ったら、どんな用事があっても、家の外へは一歩も踏出さなくなった。忠義一図の御飯焚お悦は、お家に不吉のある兆と信じて夜明に井戸の水を浴びて、不動様を念じた為めに風邪を引いた。田崎が事の次第を聞付けて父に密告したので、お悦は可哀そうに、馬鹿をするにも程があるとて、厳しいお小言を頂戴した始末。私の乳母は母上と相談して、当らず触らず、出入りの魚屋「いろは」から犬を貰って飼い、猶時々は油揚をば、崖の熊笹の中へ捨てて置いた。

父親は例の如くに毎朝早く、日に増す寒さをも厭わず、裏庭の古井戸に出て、大弓を引いて居られたが、もう二度と狐を見る機会がなかった。何処から迷込んだとも知れぬ痩せた野良犬の、油揚を食って居る処を、家の飼犬が烈しく噛み付いて、其の耳を喰切った事がある。