Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
で、背を円くしながらうつらうつら眼をつぶっていた。案じた程に痩せてもいないし、毛なみもつやつやとしているのは、相当に優遇されているからであろう。思ったよりも大事にされている証拠には、彼女のために専用の座布団が二枚も設けてあるばかりではない、たった今、お昼の御馳走に生卵を貰ったと見えて、きれいに食べ尽した御飯のお皿と、卵の殻とが、新聞紙に載せて部屋の片隅に寄せてあり、又その横には、蘆屋時代と同じようなフンシさえ置いてあるのである。と、突然庄造は、久しい間忘れていたあの特有の匂を嗅いだ。嘗て我が家の柱にも壁にも床にも天井にも沁み込んでいたあの匂が、今はこの部屋に籠っているのであった。彼は悲しみがこみ上げて来て、
「リリー、………」
と覚えず濁声を挙げた。するとリリーはようようそれが聞えたのか、どんよりとした慵げな瞳を開けて、庄造の方へひどく無愛想な一瞥を投げたが、ただそれだけで、何の感動も示さなかった。彼女は再び、前脚を一層深く折り曲げ、背筋の皮と耳朶とをブルン! と寒そうに痙攣させて、睡くてたまらぬと云うように眼を閉じてしまった。
今日はお天気がいい代りに、空気が冷え冷えと身に沁むような日であるから、リリーにしたら火鉢の傍を離れるのがイヤなのであろう。