Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ねこぐるま

猫車

宮本 百合子

Lesen Sie 猫車 (ねこぐるま) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.310 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

「そんならなんで坂口はんは損ばかりしといでるんじゃ。若い頃、横浜でチーハーにかかりよって、わしは懲りちょる。飯も食えんようになりよった。株はいかん! こっちに二百円儲けた者があれば、きッとどっかにそれだけ損しちょる者がある。畑なら何がないようになっても、食うてだけはゆける」

体のがっちりとした気もがっちりとした地主の爺さんと、肩のすぼけた、気もすぼけた地主の爺さんとは、両方とも譲らず、その執拗さで却って二人ながらに迫っている老耄を思わせるばかりに株がいい、土地がいいと諍っている。きいているおさやの家には土地もなければ、株もない。

三時の市況をラジオできいてから、やっと坂口は店先から出て行った。

おさやが、

「――どうどす、この頃は――嫁はんやっぱり卵もって来はりますか?」

と、笑いながら訊いた。

「来よります」

白い瀬戸ものの歯の上で唇をすぼめるような恰好にして重蔵が答えた。

「せんぐり持って来よる。それにおとといから待遇がぐんと違って来た。風呂がわくと、先ず、お父はん、お入りませと云うて来るようになりよった、ハハハハハハ」

その笑いかたには、隣りの座敷にいるお縫が思わず注意をひかれたほど棘々しさがあった。