Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこぐるま
猫車
宮本 百合子
Lesen Sie 猫車 (ねこぐるま) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.310 Zeichen · 35 Bildschirme
何故なら親たちと一緒に正一が洋楽を好かないのを、お縫はずっと只頑固なのかと思ってもいたし、少し意地わるく、若しかしたらわざと猫をかぶっているのかしらとも思わないでもなかった。兵隊に行っていて、その二年間は都会の空気の中で暮して来た正一が、ジャズなんか好きになってかえったとしれると、その間に小遣いなんか送らせた理由も勘づかれ、面倒になるから跋を合わせているのかと思った。けれど、もし正一の洋楽をきらう心持が別のことからだったらどうであろう。洋楽をきくと自分と同じに心持を動かされ、しかも、少しはこういう辺鄙な村にはない生活の断片をも知っている正一が、現在ここにありもしないものになまじっか心をひかれるのが厭で、ジャズなんかききたがらないのだったとしたら――。
おさやが茶がわりに飲むハブ茶を七輪のおきにかけながら、お縫は、はっきりと一つの笑い顔を思い出した。それは正一が除隊になってかえって来て、組合が祝の酒盛をした時のことであった。重蔵なども先に立って、お縫の耳にきき苦しいような冗談を云っては正一の嫁とり話が出た。正一はうすら赧い顔をして笑っていたが、それは決してうれしい笑いでも、極りがわるいだけの笑いでもなかった。