Japanische Klassiker mit Furigana
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りそうのおんな
理想の女
豊島 与志雄
Lesen Sie 理想の女 (りそうのおんな) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.162 Zeichen · 77 Bildschirme
彼女にとってはそれが偶然の天恵だった。美わしい歯並の奥からぴかりと黄金色に光る糸切歯は、彼女の微笑みに云い知れぬ魅力を与えていたのである。それは兎に角として、この糸切歯から一枚飛んだ奥の下歯が、以前から虫に蝕されていた。時々痛み出すこともあった。然しいつもすぐによくなった。所が此度は、三四日たっても痛みが止まなかった。「あの晩からよ、」と彼女は云った。私は冷りとした。そして無理に歯医者へ通わした。
歯医者の言葉に依れば、その虫歯は可なりひどくなってるので、セメンをつめ金を被せるのには、二週間余りかかるとのことだった。その間彼女は、初めの一週間は毎日、後の一週間余は一日置きに、文字通り神経をすりへらす手術を受けなければならなかった。神経質な彼女はそれを非常に苦にした。出かける時には、つまらない用事に愚図々々こだわって、なるべく時間を後らそうとした。帰ってくると、眉をしかめながら碌々口も利かないで、数時間じっとしてることさえあった。それから非常に上機嫌になったり不機嫌になったりした。それがまた一々私に反映した。
九時頃に起き上る。もう朝食の用意は出来ている。