Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
百瀬の本家の先代は、どういうものかこの盲人にひどく気をとられて、盲人の不評を庇護した許りでなく、一人の子供の乳母で子供が乳離れしてからまだ家にいた女を盲人に娶合せて本家の向う側に小さな雑貨店を出させた。百瀬の姓をも与えて親戚関係を結んだ。それというのがこの盲人には負けぬ気の痩我慢があった。本家の先代はよくこの盲人を相手にして碁だの将棋だのをさす。盲人は負けると世にも口惜しそうな顔になるのを強いて笑い歪めて、
「旦那には何かと恩があるので思い切って刃向えないんだ。遠慮さえしなけりゃ、なに」
と、そう言って、また戦を挑む。また負ける。また同じことを言う。決して負けたとは言わない。
本家の先代には、盲人がそういうときの白眼を剥いた歪んだ顔は、急に油臭いものになって見るに堪えない気持がすると同時に、世の中に嘗て見たこともない生々しい感じに撃たれる。そしてどうかしてこの盲人の不逞なものを取り挫いて、心から自分に向ってお叩頭をさせたい願望に充たされるのであった。
これは碁将棋のような遊び事ばかりでなく、如何なる好意に対してもこの盲人から素直な感謝は見られないのであった。