Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
一度は天保の饑饉のときにこの尾根一ぱいに野老芋が蔓延って、村民はこれを掘って餓えを凌ぐことが出来たという。また、餅に混ぜて食えば食われる土が岩層の間から採れたともいう。もう一度は明治初期の或年の大雨のときに多那川は堤を切ってこの界隈の人家を没したことがありました。そのとき避難所としてこの山がなかったなら、恐らくこの平地の土民は全滅したであろうということです。明治中期の文明開化人である弥太郎翁もこの言い伝えだけは迷信とくさすことをせず、家財整理のときも最後の苦しみをしてこの山だけは取り止めたのでした。
象の頭の上にちょっとした見晴亭があるのが風雨に朽ちて僅かな屋根と柱ばかりになっています。弥太郎翁の全盛時代、芸妓など連れて来て桃林の見晴らしの莚を張った名残りだそうです。
啓司は、風雨に洗い晒らされて舟板のようになっている床の上に寝転んで、懐の中から本を二冊頭の辺に投げ出しました。わたくしは少し離れて床の敷居の端に腰かけました。
しばらく景色を眺めていた啓司はわたくしの方を振向いて徐ろに、
「蝶子さん」
と呼びました。言葉は親しみ深くその上、敬称で呼ばれたのでわたくしはおやと思いました。