Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
毎年、ちょうど今時分、やはりこの鯔を釣って帰りました。すると、母はなり振り関わず料理手になり、しまを相手に、この魚を刺身にしてみたり、塩焼にしてみたり、沢山獲れた場合には剖いて大きな干物を拵えて、父の部屋の二階の窓まで釣って干しました。
わたくしは、その煙のようなにおいを嗅ぐと眩暈がしますので、しばらく外へ避けていてから帰ってまいります。もちろんこの魚の肉を絶対にわたくしは喰べません。しかし、この魚の腹には俗に「鯔の臍」という筋肉質で算珠盤玉のような形のした臓器が入っております。何の臓器だか存じませんが、串にさして塩を振って焼いたものは殆ど腥味がなく、きし/\したゴムのような歯触りにとても気持のよいところがあって、わたくしは好きでした。しまはそれを知っているものですから、いつも拵えて置いて呉れました。
「お蝶さま、はい、鯔のお臍」
わたくしは名前が面白いので、くゝと含み笑いしながら、喰べます。
そして気がついてみると父も鯔は喰べないけれども、この鯔の臓器は好きで、しまに拵えさしたのを膳の上に並べ、これを酒の肴に晩酌の盃を傾けておりました。
しまが、わたくしのことを言うと、日頃、わたくしに無関心な父が、じーっとわたくしの顔を凝視めましたが、たった一言、「お蝶は妙なものが好きだな」