Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
部屋にはいって二人が座についてから、私は始めてほんとうにその男を見た。男はぶきっちょうに、それでも四角に下座にすわって、丁寧に頭を下げた。
「しばらく」
八畳の座敷に余るようなを帯びた太い声がした。
「あなたはどなたですか」
大きな男はちょっときまりが悪そうに汗でしとどになったまっかな額をなでた。
「木本です」
「え、木本君※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
これが君なのか。私は驚きながら改めてその男をしげしげと見直さなければならなかった。疳のために背たけも伸び切らない、どこか病質にさえ見えた悒鬱な少年時代の君の面影はどこにあるのだろう。また落葉松の幹の表皮からあすこここにのぞき出している針葉の一本をも見のがさずに、愛撫し理解しようとする、スケッチ帳で想像されるような鋭敏な神経の所有者らしい姿はどこにあるのだろう。地をつぶしてさしこをした厚衣を二枚重ね着して、どっしりと落ち付いた君のすわり形は、私より五寸も高く見えた。筋肉で盛り上がった肩の上に、正しくはめ込まれた、牡牛のように太い首に、やや長めな赤銅色の君の顔は、健康そのもののようにしっかりと乗っていた。