Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
鋼鉄を水で溶かしたような海面が、ややもすると角立った波をあげて、岸を目がけて終日攻めよせているだろう。それにしてももう老いさらぼえた雪道を器用に拾いながら、金魚売りが天秤棒をになって、無理にも春をよび覚ますような売り声を立てる季節にはなったろう。浜には津軽や秋田へんから集まって来た旅雁のような漁夫たちが、鰊の建網の修繕をしたり、大釜の据え付けをしたりして、黒ずんだ自然の中に、毛布の甲がけや外套のけばけばしい赤色をまき散らす季節にはなったろう。このころ私はまた妙に君を思い出す。君の張り切った生活のありさまを頭に描く。君はまざまざと私の想像の視野に現われ出て来て、見るように君の生活とその周囲とを私に見せてくれる。芸術家にとっては夢と現との閾はないと言っていい。彼は現実を見ながら眠っている事がある。夢を見ながら目を見開いている事がある。私が私の想像にまかせて、ここに君の姿を写し出してみる事を君は拒むだろうか。私の鈍い頭にも同感というものの力がどのくらい働きうるかを私は自分でためしてみたいのだ。君の寛大はそれを許してくれる事と私はきめてかかろう。
君を思い出すにつけて、私の頭にすぐ浮かび出て来るのは、なんと言ってもさびしく物すさまじい北海道の冬の光景だ。