Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
漁夫たちの群れから少し離れて、一団になったお内儀さんたちの背中から赤子の激しい泣き声が起こる。しばらくしてそれがしずまると、風の生み出す音の高い不思議な沈黙がまた天と地とにみなぎり満ちる。
やや二時間もたったと思うころ、あや目も知れない闇の中から、硫黄が丘の山頂――右肩をそびやかして、左をなで肩にした――が雲の産んだ鬼子のように、空中に現われ出る。鈍い土がまだ振り向きもしないうちに、空はいち早くも暁の光を吸い初めたのだ。
模範船(港内に四五艘あるのだが、船も大きいし、それに老練な漁夫が乗り込んでいて、他の船にかけ引き進退の合図をする)の船頭が頭をあつめて相談をし始める。どことも知れず、あの昼にはけうとい羽色を持った烏の声が勇ましく聞こえだす。漁夫たちの群れもお内儀さんたちのかたまりも、石のような不動の沈黙から急に生き返って来る。
「出すべ」
そのさざめきの間に、潮でび切った老船頭の幅の広い塩辛声が高くこう響く。
漁夫たちは力強い鈍さをもって、互いに今まで立ち尽くしていた所を歩み離れてめいめいの持ち場につく。お内儀さんたちは右に左に夫や兄や情人やを介抱して駆け歩く。