Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うまれいずるなやみ

生まれいずる悩み

有島 武郎

Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

不思議なしびれはどんどん深まって行く。波の音なども少しずつかすかになって、耳にはいったりはいらなかったりする。君の心はただいちずに、眠り足りない人が思わず瞼をふさぐように、崖の底を目がけてまろび落ちようとする。あぶない‥‥あぶない‥‥他人の事のように思いながら、君の心は君の肉体を崖のきわからまっさかさまに突き落とそうとする。

突然君ははね返されたように正気に帰って後ろに飛びすざった。耳をつんざくような鋭い音響が君の神経をわななかしたからだ。

ぎょっと驚いて今さらのように大きく目を見張った君の前には平地から突然下方に折れ曲がった崖の縁が、地球の傷口のように底深い口をあけている。そこに知らず知らず近づいて行きつつあった自分を省みて、君は本能的に身の毛をよだてながら正気になった。

鋭い音響は目の下の海産物製造会社の汽笛だった。十二時の交代時間になっていたのだ。遠い山のほうからその汽笛の音はかすかに反響になって、二重にも三重にも聞こえて来た。

もう自然はもとの自然だった。いつのまにか元どおりな崩壊したようなさびしい表情に満たされて涯もなく君の周囲に広がっていた。