Japanische Klassiker mit Furigana
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たざきそううんとそのこ
田崎草雲とその子
吉川 英治
Lesen Sie 田崎草雲とその子 (たざきそううんとそのこ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.568 Zeichen · 40 Bildschirme
右隣に星巌、左隣に美婦 無月の家に七草や悲し
と、独り言をいう。
なんの真似か、家来も、訊いてみる者がなかったが、どうも、蝉の真似らしい。草雲の瑞白は、さっそく、覚えて、鼻抓みのみんみんを、至るところでやって歩く。家元の御隠居が見て、
『小僧、それも覚えたか』
この老蝉と幼蝉が、共鳴して、庭をぶらついている時などを思うと、それを眺めている家来たちの、変な顔も、想像されてくる。
二十歳の時、草雲は脱藩して江戸へ走った。画心壮心二つながら、燃えて、じっと、小藩の禄を、安為として食べては居られなかったのである。
右隣に星巌、左隣に美婦
無月の家に七草や悲し
菊女を娶り、格太郎を生じ、貧乏第二期から三期へのあいだに、草雲は一家を移して、浅草の伝法院地内、火之見横町の長屋に住みかえていた、――が貧乏は、引っ越してもついて来る。
『あの、まことに――』と、お菊はよく、顔を紅めながら、勝手口から隣の勝手口へ、女同志の心やすだて、打明けに行くことがあった。
『いつも、いつも、申しかねるのでございますが』
それだけいうと、隣の細君は、すぐ察して、
『お米ですか』と、いってくれる。
『いえ、今日は、その白米は少々ととのえましたが、醤油も、味噌も、きれまして』