Japanische Klassiker mit Furigana
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たざきそううんとそのこ
田崎草雲とその子
吉川 英治
Lesen Sie 田崎草雲とその子 (たざきそううんとそのこ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.568 Zeichen · 40 Bildschirme
と、二人は見送って、
『もしや、御子息格太郎様の身辺に……』
『そう……以来ちっとも、沙汰を聞かぬが』
『然し、それを口に出すと、先生は、いやな顔をされる。気にかかるが、また日を改めて、出かけようじゃないか』
二人は、藩邸の長屋をふり顧って、帰って行った。
その湯沢と安田とを、たった今、玄関へ送り出したばかりな草雲は、すぐに、二階へ上って、もう南向きの窓の下で、画筆をとっていた。
赤誠民兵隊を号令した馬上の田崎恒太郎と、和やかな、絵絹に丹青を凝している草雲とは、まるで、違った人のように見える。今、描きかけていたのは、三幅の絹地へ、中に人物を描き、左右に、秋の七草と月とを構図したものだった。
『はて、風邪をひいたかな』
草雲は、ふと、そんな気がした。――背すじに、しいんと、冷たいものを感じたのである。ゆうべも、一昨日の晩も、この画稿のために、夜を更かしていたので、そのせいかとも思った。
余り、眼が疲れたので、絵筆を持ったまま、脊骨をのばした。と、うしろの白襖に、自分が描いている七草の模様が、ありの儘に、ぼっと映っているような気がした。
『眼の疲れだ……』
彼は、そう呟いたが、いつ迄も、見つめていた。