Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たばたにっき

田端日記

芥川 竜之介

Lesen Sie 田端日記 (たばたにっき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.435 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

聞いて見ると、この歯医者の先生は、いまだかつて歯痛の経験がないのだそうである。それでなければ、とてもこんなに顔のゆがんでいる僕をつかまえて辣腕をふるえる筈がない。

かえりに区役所前の古道具屋で、青磁の香炉を一つ見つけて、いくらだと云ったら、色眼鏡をかけた亭主が開闢以来のふくれっ面をして、こちらは十円と云った。誰がそんなふくれっ面の香炉を買うものか。

それから広小路で、煙草と桃とを買ってうちへ帰った。歯の痛みは、それでも前とほとんど変りがない。

午飯の代りに、アイスクリイムと桃とを食って、二階へ床をとらせて、横になった。どうも気分がよくないから、検温器を入れて見ると、熱が八度ばかりある。そこで枕を氷枕に換えて、上からもう一つ氷嚢をぶら下げさせた。

すると二時頃になって、藤岡蔵六が遊びに来た。到底起きる気がしないから、横になったまま、いろいろ話していると、彼が三分ばかりのびた髭の先をつまみながら、僕は明日か明後日御嶽へ論文を書きに行くよと云った。どうせ蔵六の事だから僕がよんだってわかるようなものは書くまいと思って、またカントかとか何とかひやかしたら、そんなものじゃないと答えた。