Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
娘はその細い路をたどってゆく。西岡もつづいて行った。
「人違いであったらば、あやまるまでのことだ。思い切って呼んでみよう。」
西岡も少しく焦れて来たので、ひとすじ道のうしろから思い切って声をかけた。
「もし、もし。」
娘には聞えないのか、黙って俯向いて足を早めてゆく。それを追いながら西岡は又呼んだ。
「もし、もし。お嬢さん。」
娘はやはり振向きもしなかったが、うしろから追って来る人のあるのを覚ったらしい。俄かに路をかえて草むらの深いなかへ踏み込んでゆくので、西岡はいよいよ不思議に思った。
「もし、もし。姐さん……お嬢さん。」
つづけて呼びながら追ってゆくと、娘のすがたはいつか草むらの奥に隠れてしまった。西岡はおどろいて駈けまわって、そこらの高い草のなかを無暗に掻き分けて探しあるいたが、娘のゆくえはもう判らなかった。西岡はまったく狐にでも化かされたような、ぼんやりした心持になった。そうして、なんだか急に薄気味悪くなって来たので、早々に引っ返して青山の大通りへ出た。
家へ帰って詮議すると、きょうもお福はどこへも出ないというのである。お福には限らず、そのころの武家の若い娘がむやみに外出する筈もないのであるから、出ないというのが本当でなければならない。