Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
晴れた日には堤の上から淵の底までも透いて見えると言い伝えられているが、きょうは一天ぬぐうがごとくに晴れわたって、初夏の真昼の日光がまばゆいばかりにきらきらと水を射ているにもかかわらず、少しく水をくぐって行くと、あたりは思いのほかに暗く濁っていたが、水練に十分の自信のある大原は血気の勇も伴って、志度の浦の海女のように恐れげもなく沈んで行った。沈むにつれて周囲はますます暗くなる。一種の藻のような水草が手足にからむように思われるのを掻きのけながら、深く深くくだって行くと、暗い藻のなかに何か光るものが見えた。
それが何者かの眼であることを悟ったときに、大原の胸は跳った。かれは念のために背なかの刀を一度探ってみて、さらにその光る物のそばへ潜りよると、それは大きい魚の眼であった。なおその正体を見届けようとして近づくと、魚はたちまちに牡丹のような紅い大きい口をあいて正面から大原にむかって来た。それは淵の主ともいうべき鯉か鱸のたぐいであろうと思ったので、かれは一刀に刺し殺そうとしたが、また考えた。その正体はなんであろうとも、しょせんは一尾の魚である。手にあまって刺し殺したとあっては、きょうの手柄にならない。