Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
かの金時が鯉を抱いたように生捕りにして上覧に入れようと、かれは水中に身をかわして、かの魚を横抱きにかかると、敵も身を斜めにして跳ねのけた。その途端に、鰭で撲たれたのか、尾で殴られたのか、大原は脾腹を強く打たれて、ほとんど気が遠くなるかと思う間に、魚は素早く水をくぐって藻の深いなかへ姿を隠してしまった。気がついて追おうとすると、そこらの水草は、いよいよ深くなって、名も知れない長い藻は無数の水蛇か蛸のように彼の手足にからみ付いてくるので、大原もほとほと持て余した。
彼はよんどころなしに背なかの刀をぬいて、手あたり次第に切り払ったが、果てしもなく流れつき絡み付く藻のたぐいを彼はどうすることも出来なかった。大原は蜘蛛の巣にかかった蝶のようにいたずらにもがき廻っているうちに、暗い底には大きい波が湧きあがって、無数の藻のたぐいはあたかも生きている物のように一度にそよいで動き出した。そのありさまをみて、大原はおそろしくなった。彼はもうなんの考えもなしに早々に泳いで浮きあがった。
大原は堤へ帰って自分の見たままを正直に申立てた。しかし唯おそろしくなって逃げ帰ったとは言われないので、かれは大きい魚と闘いながら、淵の底をくまなく見廻ったが、なにぶんにも鐘らしいものは見当らなかったと報告した。