Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

「初めまして、………」

と、慎ましやかな態度で云って、悧巧そうな、小さく円く、パッチリとした眸を伏せて、こころもち胸を引くようにして挨拶する、その身のこなしには、さすがは女優だけあってナオミのようなガサツな所がありません。

ナオミは為る事成す事が活溌の域を通り越して、乱暴過ぎます。口の利き方もつんけんしていて女としての優しみに欠け、ややともすると下品になります。要するに彼女は野生の獣で、これに比べると綺羅子の方は、物の言いよう、眼の使いよう、頸のひねりよう、手の挙げよう、総べてが洗煉されていて、注意深く、神経質に、人工の極致を尽して研きをかけられた貴重品の感がありました。たとえば彼女が、テーブルに就いてカクテルのコップを握った時の、掌から手頸を見ると、実に細い。そのしっとりと垂れている袂の重みにも得堪えぬほどに、しなしなと細い。きめのこまやかさと色つやのなまめかしさは、ナオミと孰れ劣らずで、私は幾度卓上に置かれた四枚の掌を、代る代る打ち眺めたか知れませんけれど、しかし二人の顔の趣は大変に違う。ナオミがメリー・ピクフォードで、ヤンキー・ガールであるとするなら、此方はどうしても伊太利か仏蘭西あたりの、しとやかなうちに仄かなる媚びを湛えた幽艶な美人です。