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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

己がもう少し巧くなるまでは厭なのだろう。厭なら厭で、己もそれまではたって踊ろうとは云わない。と、もう好い加減あきらめていたところへ、「踊って上げよう」と来たのですから、その一と声はどんなに私を喜ばせたか知れません。

で、熱病やみのように興奮しながら、ナオミの手を執って最初のワン・ステップを蹈み出したまでは覚えていますが、それから先は夢中でした。そして夢中になればなるほど、音楽も何も聞えなくなって、足取りは滅茶苦茶になる、眼はちらちらする、動悸は激しくなる、吉村楽器店の二階で、蓄音器のレコードでやるのとはガラリと勝手が違ってしまって、この人波の大海の中へ漕ぎ出してみると、退こうにも進もうにも、さっぱり見当がつきません。

「譲治さん、何をブルブル顫えているのよ、シッカリしないじゃ駄目じゃないの!」

と、そこへ持って来てナオミは始終耳元で叱言を云います。

「ほら、ほら又すべった! そんなに急いで廻るからよ! もっと静かに! 静かにッたら!」

が、そう云われると私は一層のぼせ上ります。おまけにその床は特に今夜のダンスのために、うんと滑りをよくしてあるので、あの稽古場の積りでうっかりしていると、忽ちつるりと来るのです。