Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
「それそれ! 肩を上げちゃいけないッてば! もっとこの肩を下げて! 下げて!」
そう云ってナオミは、私が一生懸命に握っている手を振りもぎって、ときどきグイと、邪慳に肩を抑えつけます。
「チョッ、そんなにぎゅッと手を握っててどうするのよ! まるであたしにしがみ着いていちゃ、此方が窮屈で仕様がないわよ!………そら、そら又肩が!」
これでは何の事はない、全く彼女に怒鳴られるために踊っている様なものでしたが、そのガミガミ云う言葉さえが私の耳には這入らないくらいでした。
「譲治さん、あたしもう止めるわ」
と、そのうちにナオミは腹を立てて、まだ人々は盛んにアンコールを浴びせているのに、どんどん私を置き去りにして席へ戻ってしまいました。
「ああ、驚いた。まだまだとても譲治さんとは踊れやしないわ、少し内で稽古なさいよ」
浜田と綺羅子がやって来る、熊谷が来る、菊子が来る、テーブルの周囲は再び賑やかになりましたが、私はすっかり幻滅の悲哀に浸って、黙ってナオミの嘲弄の的になるばかりでした。
「あははは、お前のように云った日にゃあ、気の弱え者は尚更踊れやしねえじゃねえか。まあそう云わずに踊ってやんなよ」