Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

「おい、河合君、まあかけ給え」

と、ニヤニヤ笑いながら呼び止めたのは、Sと云う男でした。Sはほんのり微醺を帯びて、TやKやHなどと一つソオファを占領して、そのまん中へ私を無理に取り込めようとするのでした。

「まあ、そう逃げんでもいいじゃないか、これから何処かへお出かけかね、この雨の降るのに。―――」

と、Sはそう云って、孰方つかずに衝っ立ったままの私の顔を見上げながら、もう一度ニヤニヤ笑いました。

「いや、そう云う訳じゃないけれど、………」

「じゃ、真っ直ぐにお帰りかね」

そう云ったのはHでした。

「ああ、済まないけれど、失敬させてくれ給え。僕の所は大森だから、こんな天気には路が悪くって、早く帰らないと俥がなくなっちまうんだよ」

「あははは、巧く云ってるぜ」

と、今度はTが云いました。

「おい、河合君、種はすっかり上ってるんだぜ」

「何が?………」

「種」とはどう云う意味なのか、Tの言葉を判じかねて、私は少し狼狽しながら聞き返しました。

「驚いたなアどうも、君子とばかり思っていたのになア………」

と、次にはKが無闇と感心したように首をひねって、

「河合君がダンスをすると云うに至っちゃあ、何しろ時勢は進歩したもんだよ」