Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
「譲治さん、あたしいくらかせいが伸びた?」
「ああ、伸びたとも。もうこの頃じゃ僕とあんまり違わないようだね」
「今にあたし、譲治さんより高くなるわよ。この間目方を計ったら十四貫二百あったわ」
「驚いたね、僕だってやっと十六貫足らずだよ」
「でも譲治さんはあたしより重いの? ちびの癖に」
「そりゃ重いさ、いくらちびでも男は骨組が頑丈だからな」
「じゃ、今でも譲治さんは馬になって、あたしを乗せる勇気がある?―――来たての時分にはよくそんなことをやったじゃないの。ほら、あたしが背中へ跨って、手拭いを手綱にして、ハイハイドウドウって云いながら、部屋の中を廻ったりして、―――」
「うん、あの時分には軽かったね、十二貫ぐらいなもんだったろうよ」
「今だったらば譲治さんは潰れちまうわよ」
「潰れるもんかよ。嘘だと思うなら乗って御覧」
二人は冗談を云った末に、昔のように又馬ごっこをやったことがありました。
「さ、馬になったよ」
と、そう云って、私が四つん這いになると、ナオミはどしんと背中の上へ、その十四貫二百の重みでのしかかって、手拭いの手綱を私の口に咬えさせ、
「まあ、何て云う小さなよたよた馬だろう! もっとしッかり! ハイハイ、ドウドウ!」