Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
私がそう云うと、かみさんの顔にはっとかすかな驚きが走ったようでした。
「その別荘と違うんでしょうか?………」
「はあ、………あの、………」
「長谷の海岸にあると云うのは、一体誰の別荘なんです?」
「あの、―――熊谷さんの御親戚の、………」
「熊谷君の?………」
私は急に真っ青になりました。
停車場の方から長谷の通りを左へ切れて、海浜ホテルの前の路を真っ直ぐに行って御覧なさい。路は自然と海岸へつきあたります。その出はずれの角にある大久保さんの御別荘が、熊谷さんの御親戚なのでございます。―――そうかみさんは云うのでしたが、全く私には初耳でした。ナオミも熊谷も、今まで嘗てそんな話をおくびにも出しはしませんでした。
「その別荘へはナオミはたびたび行くんでしょうか?」
「はあ、いかがでございますかしら、………」
そうは云っても、そのかみさんのオドオドした素振りを、私は見逃しませんでした。
「しかし勿論、今夜が始めてじゃないんでしょうな?」
私はひとりでに呼吸が迫り、声がふるえるのをどうすることも出来ませんでした。私の剣幕に恐れをなしたのか、かみさんの顔も青くなりました。
「いや、御迷惑はかけませんから、構わずに仰っしゃって下さい。