Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
「へえ、ほんとうかね?」
私はナオミの云うことが空威張りの負け惜しみであるのを知っていながら、故意にそう云って驚いて見せました。
「当り前さ、あんな問題が出来ない奴はありゃしないわ。それを本気で出来ないと思っているんだから、譲治さんの方がよっぽど馬鹿だわ。あたし譲治さんが怒るたんびに、可笑しくッて可笑しくッて仕様がなかったわ」
「呆れたもんだね、すっかり僕を一杯喰わせていたんだね」
「どう? あたしの方が少し悧巧でしょ」
「うん、悧巧だ、ナオミちゃんには敵わないよ」
すると彼女は得意になって、腹を抱えて笑うのでした。
読者諸君よ、ここで私が突然妙な話をし出すのを、どうか笑わないで聞いて下さい。と云うのは、嘗て私は中学校にいた時分、歴史の時間にアントニーとクレオパトラの条を教わったことがあります。諸君も御承知のことでしょうが、あのアントニーがオクタヴィアヌスの軍勢を迎えてナイルの河上で船戦をする、と、アントニーに附いて来たクレオパトラは、味方の形勢が非なりとみるや、忽ち中途から船を返して逃げ出してしまう。然るにアントニーはこの薄情な女王の船が自分を捨てて去るのを見ると、危急存亡の際であるにも拘わらず、戦争などは其方除けにして、自分も直ぐに女のあとを追い駆けて行きます。