Japanische Klassiker mit Furigana
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しらねのふもと
白峰の麓
大下 藤次郎
Lesen Sie 白峰の麓 (しらねのふもと) von 大下 藤次郎 (おおしたとうじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.238 Zeichen · 45 Bildschirme
私は左を取って池の茶屋へ向った。
空模様はだんだんよくなり、折々はパッと日が照らす。山腹の岨道を何処までもゆく、少しずつの下りで足の運びは早い。
湯島から三里も来たころ、枝振よき栂の枯木を見つけて写生する。すぐ近くの笹の中では、藪鶯が一羽二羽、ここに絵筆走らす旅人ありとも知らで、ささ啼きの声が忙しない。
池の茶屋に着いたのは一時半であった。
十九
山陰の窪地に水が溜っている、不規則な楕円形の、広さは一反歩もあろう、雑木林に囲まれて水の色は青い。湯島のお吉さんは凄い池ですといったが、枯木林の中にあったのでは、一向凄くも怖しくもない。茶屋に荷物を預けて、ジクジクした水際の枯草を踏み、対岸に廻って写生箱を開いた。
破れかかった家は、水に臨んでその暗い影を映している、水の中には浮草の葉が漂うている。日は山蔭にかくれて、池の面を渉る風は冷い。半ば水に浸されている足の爪先は、針を刺すように、寒さが全身に伝わる。思わず身慄するとき、早や池の水は岸近くから凍り始めて、家の影はいつか消え失せ、一面磨硝子のようになる。同時にパレットの上の水が凍って絵具が溶けない。