Japanische Klassiker mit Furigana
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しらふじ
白藤
豊島 与志雄
Lesen Sie 白藤 (しらふじ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.822 Zeichen · 16 Bildschirme
そういう異邦人めいた感懐のなかに、ぽつりと、淡い灯をともしたような、一の心像がありました。縁側に踞まってぼんやり庭を眺めている時など、それが浮んできました。焼け跡を散歩しながら、嘗てはその辺からは見えなかった富士山の姿を、西空はるかに見出して、ふと足を止め、しみじみと眺め入っている時など、それが浮んできました。
その心像が、いつ胸の中に飛びこんできたのか、草光保治にはよく分りませんでした。帰還の途中、大船と横浜との間の列車の窓で……ということははっきりしていましたが、実は、必ずしもそれに限ったことではなかったようでした。
その時、彼は車窓にもたれて、身も心もぐったりしていました。東京の家のことや人々のことを考えるのも、夢の中でのような心地でした。そしてただうっとりと外の景色に眼をやっていました。丘陵地帯で、眼界は狭まったり広まったりしました。鋤き返した土地、麦の伸びてる土地、新緑の木立、八重桜の花、ひっそりしてる人家……それらの中に、一点、桜の花より更に真白なものがありました。白藤の花で、生籬にかこまれたひそやかな家の軒先に、余り長からぬ房をなして垂れていました。