Japanische Klassiker mit Furigana
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しらゆきひめ
白雪姫
久生 十蘭
Lesen Sie 白雪姫 (しらゆきひめ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.723 Zeichen · 21 Bildschirme
亀裂の幅はこれまで見たどれよりも広い。のぞきこんでみると、亀裂の側面は、風雪に磨かれてつらつらに光り、ぞっとするような氷の青い壁が、下へ行くほど垂直に截りたち、カトリックの地獄の幻想を彷彿させながら、無間の闇の中に消えている。雪の橋は拱の頂点で三尺ほどの厚さしかなく、要石にあたるあたりの氷が歪んで脆くなっている。亀裂の縁は踏むはしから欠け、金属的な音をたてて、底も見えぬ暗い氷の狭間へ落ちて行く。手っ取りばやくいってしまえば、ここから抜けだすのは、絶対に不可能だということであった。
阿曽は観念してジタバタしないことにしたが、雪の橋のむこうは、なだらかに傾斜する側堆石のガラ場で、この橋さえ渡れば、一時間ほどでトゥルの小屋に行き着けるという感慨は、世にも残酷なものであった。
山のうえには黄昏の色が漂っているが、シャモニーの谷はもう夜で、はるか目の下、眼路の終るあたり、宮殿のようなマジェスティック・パレスの窓々が、あかあかと電灯の光をあふらせている。陽の目も見えない陰惨な氷の割目の中で餓死することを思えば、人間界を見おろしながら凍死するほうが、まだしも幸福かもしれないが、とても、そんなことでは慰められるものではなかった。