Japanische Klassiker mit Furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lesen Sie 真珠夫人 (しんじゅふじん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 289.296 Zeichen · 578 Bildschirme
青年は、門の前で、ホンの一瞬の間、佇立した。美奈子は、やっぱり通りがかりに、一寸邸内の容子を軽い好奇心から覗くのではないかと思った。が、佇ずんで一寸何か考えたらしい青年は、思い切ったように、グン/\家の中へ入って行った。ステッキを元気に打ち振りながら。
「お客様ですわ、奥様の。」
女中は、美奈子の前の言葉に答えるように言った。
いかにも、女中の言う通、母の客間を訪う青年の一人に違いないことが美奈子にも、もう明かだった。
「お前、あの方知っているの?」
美奈子は、心の裡の動揺を押しかくすようにしながら、何気なく訊いた。
「いゝえ! 存じませんわ。妾はお客間の方の御用をしたことが、一度もないのでございますもの。きくやなら、きっと存じておりますわ。」
きくやと云うのは、母に従いている小間使の一人だった。
美奈子は、兎に角その青年が、自分の家に出入りしていると云うことを知ったことが、可なり大きい欣びだった。自分の家に出入りしている以上、会う機会、知己になる機会が、幾何でも得られると思うと、彼女の小さい胸は、歓喜のために烈しく波立って行くのだった。が、それと同時に、母が前から、その青年と知り合っていること、その青年とお友達であることが、不思議に気になり出した。